完璧

1/1
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ

完璧

ロボットである彼女は完璧だ。 テストは毎日100点だし、 寝坊なんて0.1秒もしたことがないし、 廊下を走るなんてこともない。 ロボットである彼女は完璧だ。 陰で「たかがロボットごときが」と皮肉を言われても、 下駄箱に入れていたシューズが捨てられていても、彼女は傷つかない。 ロボットである完璧な彼女のデータベースには悲しみという感情がインプットされていないからだ。 年があけて新学期を迎えると、完璧な彼女はうさぎの飼育係を任された。 完璧な彼女は新鮮な野菜と、山頂の湧水を毎日自分の手で仕入れに行き、 規則正しい時間と、規則正しい量で与えていた。 完璧な彼女はうさぎが食べ散らかしたものや、フンを跡形もなく綺麗に掃除した。 うさぎは彼女に興味を示して、近寄ったりしたのだが 完璧な彼女はうさぎを触ろうとはしなかった。 うさぎの頭を撫でてあげるという情報なんて、インプットされていなかったからだ。 うさぎは段々と元気がなくなっていった。 ご飯を食べなくなっていった。 完璧な彼女は餌の種類を変えたり、音楽を流してみたりと色々と試みたが、 元気になるどころかうさぎは日に日に弱っていった。 ある日、完璧な彼女が飼育小屋の掃除をしようと扉を開けた時、小屋の隅で冷たく横たわっているうさぎの姿を見つけた。 ロボットである彼女は完璧だ。 完璧な彼女は生命反応をしないうさぎを単なる物だと認識して、 ゴミと一緒に焼却炉に、捨てた。 ロボットである彼女は完璧だ。 彼女は今日も、テストで100点をとっている。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!