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完璧
ロボットである彼女は完璧だ。
テストは毎日100点だし、
寝坊なんて0.1秒もしたことがないし、
廊下を走るなんてこともない。
ロボットである彼女は完璧だ。
陰で「たかがロボットごときが」と皮肉を言われても、
下駄箱に入れていたシューズが捨てられていても、彼女は傷つかない。
ロボットである完璧な彼女のデータベースには悲しみという感情がインプットされていないからだ。
年があけて新学期を迎えると、完璧な彼女はうさぎの飼育係を任された。
完璧な彼女は新鮮な野菜と、山頂の湧水を毎日自分の手で仕入れに行き、
規則正しい時間と、規則正しい量で与えていた。
完璧な彼女はうさぎが食べ散らかしたものや、フンを跡形もなく綺麗に掃除した。
うさぎは彼女に興味を示して、近寄ったりしたのだが
完璧な彼女はうさぎを触ろうとはしなかった。
うさぎの頭を撫でてあげるという情報なんて、インプットされていなかったからだ。
うさぎは段々と元気がなくなっていった。
ご飯を食べなくなっていった。
完璧な彼女は餌の種類を変えたり、音楽を流してみたりと色々と試みたが、
元気になるどころかうさぎは日に日に弱っていった。
ある日、完璧な彼女が飼育小屋の掃除をしようと扉を開けた時、小屋の隅で冷たく横たわっているうさぎの姿を見つけた。
ロボットである彼女は完璧だ。
完璧な彼女は生命反応をしないうさぎを単なる物だと認識して、
ゴミと一緒に焼却炉に、捨てた。
ロボットである彼女は完璧だ。
彼女は今日も、テストで100点をとっている。
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