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熱き溶液と冷めた固体
ガラスコップが突然悲鳴をあげて割れた。
熱湯を注いだせいだ、とティースプーンは言った。
私は直ぐさま破片を集めあげ、修復を試みたがガラスコップは生き返らなかった。
破片により傷だらけになった私の両手は、ただ血を吐くだけで慰めてはくれない。
その様をテーブルの上で浸る熱湯は嘲笑っている。
気にするな、とティースプーンが言うがその優しさをも熱湯は嘲笑った。
お前は 殺していくのだよ
生命を踏みにじり お前は 生きていくのだよ
散乱した薬と鈍い光を放つ包丁。
私の瞳から流れ出る熱い溶液。
目の前に横たわる細かな肉片達は返事をしない。
私は声を張り上げて笑っていた。
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