第一章

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顔を洗って歯を磨く。 家の中は誰もいないかのように、静かだ。 両親は多分自室に籠って仕事でもしているのだろう。 ―もしくは寝ているのか。そう言えば、ここしばらく両親の顔を見ていない。 両親も自分も、1日の大半を自室で過ごしているからだ。 この時代には会社にしても学校にしても、通勤するということはなくなった。 すべてパソコンでやり取りをして済ませてしまう。 外に出る必要はない。というより、出られたものではない。 数十年前に発見されたオゾンホールはさらに拡がり、今や地球の上空を飲み込みつつある。つまり、一歩外に出れば空から降ってくる紫外線だの放射線だのにやられてしまうと言う訳だ。 それでも外に出たいと言うひねくれものは、特別製の不織布を羽織る。 70%程は紫外線の類いを阻んでくれるらしい。
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