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序章
時間が無常に過ぎていく。
壊れた人間を抱いて、今日も世界はまわり朝日は監獄島に降り注ぐ。
そんな島のスラム街の片隅で、世界でたったひとりの存在である黄髪黄眼の彼は欠伸を噛み締めた。
足元に無惨な死体を踏みつけ、背中まで伸びた髪を揺らして次々に遺体を蹴り飛ばした。
(面倒だ。焼き捨てるか)
民家にある灯油を撒き散らし、火を点けようと死体が所持していたライターを拾いあげた。
そこへ、息を切らして丸顔に丸眼鏡を掛けた女か男か分からない人間が駆けつける。
「なにをしてるんですか。隊長」
「副があんま遅いから、片付けようかと思っただけだ」
副と呼ばれたその人間は、彼が置かれた警備警察部隊の副隊長であり名前をスピカという。
「そんな。まだ、調査もすんでいないんですよ」
スピカはそんな抗議の言葉を上げながら、場に広がった血なまぐさい光景におずおずと視線を逸らした。
「調査なんかしなくても、大抵予想はつくだろ」
そんなスピカに、彼は言い放つ。まるで慣れた言い方にスピカは眉を顰め彼が見る方向へと視線を向けた。
その先には、灰色の建物が見えた。
島の名前の由来でもある監獄である。
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