29章

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「おーにさーんこちらっ」 手ーのなーる方へっ ―――しまった!! 隠れていた肇は、声にならない悲鳴をあげる。 ―――嘘……だろ? 軽やかに口ずさみながら帰って来たのは、寺子屋に通う二人の息子達であった。 「ちょうど良い。小僧が帰って来たぜ」 「おい坊主、父さんはどこ行ったか知ってるよなあ?」 援護を任せていた新兵衛の部下が2人を捕まえ、刀を構える。 違う浪士が子ども達の手をねじり上げていた。 「運悪いな、オイ」 そう言いながらも傍観する以蔵を、そして子どもを遼香は横目でちらりと見る。 わんわん泣き喚きながら、知らない知らないと繰り返し、それでもまだやめようとしない厳しい詰問に、さすがに口を挟もうかと思ったその時だった。 「―――待て」 上から、声がした。 .
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