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「おーにさーんこちらっ」
手ーのなーる方へっ
―――しまった!!
隠れていた肇は、声にならない悲鳴をあげる。
―――嘘……だろ?
軽やかに口ずさみながら帰って来たのは、寺子屋に通う二人の息子達であった。
「ちょうど良い。小僧が帰って来たぜ」
「おい坊主、父さんはどこ行ったか知ってるよなあ?」
援護を任せていた新兵衛の部下が2人を捕まえ、刀を構える。
違う浪士が子ども達の手をねじり上げていた。
「運悪いな、オイ」
そう言いながらも傍観する以蔵を、そして子どもを遼香は横目でちらりと見る。
わんわん泣き喚きながら、知らない知らないと繰り返し、それでもまだやめようとしない厳しい詰問に、さすがに口を挟もうかと思ったその時だった。
「―――待て」
上から、声がした。
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