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土佐勤。
これは遼香が勝手に略しているだけであり、正式名は『土佐勤王党』。
簡単に言えば、武市半平太が作った尊王攘夷の志を持つ土佐藩士の集まりだ。
「これから立て続けに何人もを殺す。とりあえず、明日1人」
「分かった、佐一郎でしょ」
あまり穏やかな内容ではないが、さらっと言える辺りが岡田以蔵と遼香である。
「以蔵さん!何者ですか、そいつは!!」
そこで初めて、客が口を挟む。
遼香は土佐藩出身ではなく、もちろん勤王党にすら属してはいない。
そのため以蔵が認めているとしても、不信感は隠せない。
だから話し合いからも遠ざけておいた。
それだというのに、彼女は事もなげに言う。
「森田、さっきも言っただろう。こいつ俺の護衛」
以蔵はさらりと言ってのけたが武市の使い、森田金三郎はまだ続ける。
「私の方からも先程言わせていただきましたが、以蔵さんに護衛はいらんでしょう」
畳み掛けるように森田は言葉を重ねたが、横で聞いていた遼香がふっと笑った。
「何それ、あたしが護衛?人斬りに護衛が付くとか聞いた事ないし。どんだけ弱いの土佐の人斬りさんは」
森田がはっと言葉の方をむくと、彼女はにっと笑っていた。
にこっと笑わないところがいかにも遼香らしい。
「敵わんだろ、こいつには。」
同じく以蔵もにっと笑いながら森田に話し掛ける。
「使えるんだよ、まじで。暇そうにしてたし、行く宛もなさそうだったから拾ってやったんだ。どうだ、納得したか?」
おずおずと頷いた森田を満足気に見やって、以蔵は再び遼香の方に向いた。
「察しの通り、まず手始めに、井上を殺る」
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