2章

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土佐勤。 これは遼香が勝手に略しているだけであり、正式名は『土佐勤王党』。 簡単に言えば、武市半平太が作った尊王攘夷の志を持つ土佐藩士の集まりだ。 「これから立て続けに何人もを殺す。とりあえず、明日1人」 「分かった、佐一郎でしょ」 あまり穏やかな内容ではないが、さらっと言える辺りが岡田以蔵と遼香である。 「以蔵さん!何者ですか、そいつは!!」 そこで初めて、客が口を挟む。 遼香は土佐藩出身ではなく、もちろん勤王党にすら属してはいない。 そのため以蔵が認めているとしても、不信感は隠せない。 だから話し合いからも遠ざけておいた。 それだというのに、彼女は事もなげに言う。 「森田、さっきも言っただろう。こいつ俺の護衛」 以蔵はさらりと言ってのけたが武市の使い、森田金三郎はまだ続ける。 「私の方からも先程言わせていただきましたが、以蔵さんに護衛はいらんでしょう」 畳み掛けるように森田は言葉を重ねたが、横で聞いていた遼香がふっと笑った。 「何それ、あたしが護衛?人斬りに護衛が付くとか聞いた事ないし。どんだけ弱いの土佐の人斬りさんは」 森田がはっと言葉の方をむくと、彼女はにっと笑っていた。 にこっと笑わないところがいかにも遼香らしい。 「敵わんだろ、こいつには。」 同じく以蔵もにっと笑いながら森田に話し掛ける。 「使えるんだよ、まじで。暇そうにしてたし、行く宛もなさそうだったから拾ってやったんだ。どうだ、納得したか?」 おずおずと頷いた森田を満足気に見やって、以蔵は再び遼香の方に向いた。 「察しの通り、まず手始めに、井上を殺る」 .
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