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振り向くと、煙のなかに神太郎が立っていた。
「まだ生きていたんデスか。しぶとい人間。」
立ち上がったものの、頭部からの出血、右腕の骨折など戦うには不利な状況だ。
目眩はしないが、目の前が霞んで見える。
だが、再錬の場所はわかる。
神太郎の精神が変わり始めた。
あの時のように……。
再錬は、神太郎の異変に気がついた。
漆黒だった髪が、徐々に金色に変わっている。
そして、完全に金色に変わった。
「お前……そんなに会いたいなら自分から会いに行くかぁ?」
神太郎の目も変わった。
再錬は嫌な感じがした。
ただの人間にクレイプが負けるわけない。
しかし、ただの人間じゃなかったとしたら……!
神太郎は消えかかる意識のなかでもわかった。
自分の中いる『奴』が今することを……。
奴はゆっくりと歩き始めた。
左手には、京花からもらったトンファーがしっかりと握られている。
頭からは血が流れ、地面にポタポタと落ちていく。
ジリジリと再錬に近づくと、爆符が飛んできた。
だが今はそんなものは無意味だ。
神太郎が考えていたことは一つだけだった。
「あばよ。再錬。」
左手のトンファーが、鋭く再錬の頭を突いた。
再錬は銃に撃たれたかのように、頭部から血を流し、息絶えた。
目に涙を見せ、悲しい笑顔が死顔だった。
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