第一章 『牢獄』

24/27
前へ
/99ページ
次へ
少年に与えられるモノは いつだって 憎悪にみちたうらみごとと はげしく残酷な暴力だけでした。 だから 少年は ずっと あきらめていたのでした。 じぶんが いちばん ほしかったものを。 じぶんのためだけに むけられる 優しいえがおを。 男は 少年を やさしく抱きしめて 言いました。 “こんないびつな世界でも、 きみは とてもキレイな眼と髪をしているんだね とてもキレイな銀色だ。” わらっているはずなのに なぜか男は 泣きそうな声を していたのでした。 少年は 泣きませんでした。
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19194人が本棚に入れています
本棚に追加