戸を開けると…

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「う~寒。…今朝はえらく冷えるっすねぇ。」 背中を丸め、両手を器用に袖に入れ込んだ姿で、裏原商店の店主である裏原喜助は、足早に店の戸口に向かっていた。 ガラ…と、戸を開けると、目の前はどこを見渡しても白、白、白の一面雪の世界だった。吐き出される息もいつも以上に真っ白である。 「…こりゃ凄い、初雪ですか。どおりで寒いはずだ。」 しかも、まだ雪は休むことなくチラチラと降り続けている。 「結構積もってきてますねぇ。これじゃあ今日は仕事になりそうにないか。さてと、子供達でも呼んでやりますかね。ジン太は特に、雪が降るのを心待ちにしてたみたいですし…。お~い、ジン太~!うるる~!起きておいで~!!君達のお待ちかねの雪が積もってますよ~!!」 店を開けることを断念した喜助は、浦原商店に住むジン太と雨を呼んだ。   …数秒後。   家の奥からドタドタと慌ただしく飛び出てきた2人は、降り積もった雪を見ると、まるで犬のように庭をはしゃいで駆け回り、早速雪合戦を開始していた。
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