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「いや~、楽しそうで何より。しかし、子供というのはこんな日でも元気でいいっすね~。」
戸口にもたれ掛かかり、はしゃぐ2人を眺めながらそんな感想を口にした途端、突然足元からため息と共に、呆れかえったような声が聞こえてきた。
「はぁ……何を年寄り臭いことを言うておるんじゃ、お前は。」
声のした方へ顔を向けると、其処には漆黒の毛を纏い、しなやかな体躯を持った猫姿の夜一が行儀良くちょこんと座り、喜助を半眼で見上げていた。
「おやぁ、誰かと思えば夜一さんじゃないっすか。どーしたんです、粋なり?…あ、分かりました!!年末年始の準備の邪魔になるからって家から追い出されちゃったんでしょう?」
「違うわ、馬鹿者が!!わしが自ら進んで出てきたのだ。」
膝を抱えるように腰を落として夜一と目線を合わせ『当たりでしょう?』と言わんばかりの楽しそうな表情で問うてきた喜助に、夜一が不機嫌そうな顔で反論すると、意外…とでも言いたげな顔で逆に問い返してきた。
「へぇ、自分から…。そりゃまた、どうして?」
「…まぁ、お前の言う通り、今、あちらは年末年始の準備で忙しくての。わしも何か手伝おうかと申し出てはみたんじゃが、砕蜂が…「このような事は夜一様のお手を煩わせるようなものではございません。ですので、日頃の疲れを取る為にも夜一様はごゆっくりとなさっていて下さい。」と、あっさり断られてしまっての。じゃからと言うて、忙しなく動き回る者達の中で自分1人何もせずに居るというのは流石に心苦しくての。ならば、せめて邪魔をせぬようにと思って、出てきた…と言うわけじゃ。」
それで、どうやら納得がいったらしい喜助は、1人で、うんうんと頷いた。
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