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父母と呼べる存在は、私を嫌っていただろうな。
しかし私は彼らを恨んでなどいない。
彼らに与えられた疵が、未だに幻肢痛として疼くのだ。
この甘美なる痛みは、彼らが私にくれた、唯一にして最高の贈り物。
今も痛む心の疵は、体の内側を痙攣させながら駆け巡る。
その”生”を感じる瞬間、私を見てくれた彼らの”愛情”を、私は感じるのだ。
記憶を反芻する中にあるのは、傷つけられるシーンだけ。
一緒に何かした事や、どう生活していたか……彼らはいつ死んだのか。
それらの記憶はまったくないというのに。
否、それで充分ではないか。
振り上げられる手
電気が走る
熱を帯びる頬
そして―――愛情の残滓
疵として残る愛の、何と素晴らしいことだろう……!
■アルゴラ■ 独白
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