序章

2/2
38人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
ここが僕が受験した学園の入学式の会場だとは分かっている。 ここの学園の教科書や体操着もすでに用意は出来ているし、今だってここの学園の制服を着込んでこの場に参列している。 今まで信じられない程に田舎の、一クラスに生徒が二桁いるかいないかのあり得ない学校に通っていただけに、今ここに参列している自分を含めた約二百人の新入生には圧倒される。 皆、晴れ晴れとした清々しい顔で教壇に立っている綺麗、と言う言葉がまさにぴったりと言う感じの新入生代表の声に耳を傾けている。 泣いている人もチラホラ見えるが、それがここに入学出来た喜びを噛み締めたからなのか、花粉症からなのかは分からない。 出入口や窓を全開にしているので、外の桜の木から花びらが入学式会場、体育館の中に舞い込んで来ていて感極まるとも言えるが、前に参列する教師の一人。合理的な判断こそ正しいと思っていそうな眼鏡の、痩せ気味で明らかに硬派な先生が、露骨に顔をしかめて桜の花びらを睨んでいるのが、僕のいる後ろの位置からここからでも分かる。 だが、僕の問題はそんな事ではない。 今考えても分からない、本当に全く持って分からない。 僕がこの場に立てている訳が……。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!