第2章─氷の結界─

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太陽が昇りはじめた。 僕は校門を背にして立っている。 隣にはフロージア様、正面にはウェイン。 2人は僕を見送りにきてくれている。 「ジュリアンは来ないね……」 ウェインが学校のほうを見ながら呟く。 「朝早いから仕方ないよ」 僕はウェインに笑いかける。 「でもさぁ……」 「来ないのは寂しいけど……強制することじゃないから」 「うん……」 ウェインがうつむいた。 ジュリアンが来てくれないのは寂しい。 だけど会えなくなる訳じゃないから。 僕は学校のほうを見た後、ウェインを抱きしめた。 「じゃあ行ってくるよ」 「気をつけて……フェイア……」 ウェインが僕を抱きしめ返す。 僕はウェインから離れるとフロージア様を見た。 「……では門を開けます」 フロージア様が指をならすと、門が重厚な音を立てて開き始める。 僕はゆっくりと門に近付いた。 これが開ききったらもう戻れない。 心の底から戻りたいという気持ちが湧き上がる。 僕はその感情を必死に押し殺した。 門が開ききり街が見えた。 まだ朝早いため、人の姿は見当たらない。 見えるのは街のあちこちで寝ている魔法生物だけ。 僕は階段を降りるため、一歩踏み出した。
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