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「ちょっとっ……待ちなさいよっ!」
僕は後ろを振り向く。
ジュリアンがこっちに向かって走ってきていた。
僕の数歩先で止まると、呼吸を整え僕を睨む。
「私を待たずに行くなんていい度胸ねぇ、フェイア」
「これでもだいぶ待ったんだけど?」
僕が言うとジュリアンはフンッと鼻であしらう。
「女の子が来るまで待つのは普通でしょぉ?」
「それは普通なのか?」
「普通なのよ!」
ジュリアンが大きく一歩を踏み出した。
僕との距離が縮み、ジュリアンの髪が僕の頬をくすぐる。
「ジュリア……」
僕の言葉はジュリアンによって遮られた。
一瞬何が起こったか分からなかったが、すぐに理解出来た。
ジュリアンは僕に抱きついたままキスをしている。
抱きつかれているから動けない。
僕はジュリアンが離れるまで何もすることが出来ないんだ。
ほんの数秒なのに数分にも感じる。
ジュリアンがようやく離れると、僕はうろたえて後ろに後ずさってしまった。
すぐ後ろが階段だということを忘れて。
それを思い出した今ではもう遅い。
僕は真っ逆さまに階段を落ちていった。
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