第2章 ―海上護衛総隊―

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「敵潜、浮き上がりつつあります。方位正面、距離五百、深度二十。」 「まずいなぁ、苦し紛れに魚雷を発射して来るかもしれんな。」 艦長の予言は間もなくして、的中したのである。 「敵潜!魚雷発射管を開けています!」 それまで静かに報告していた大友一曹が、大声で言った。 「両舷前進一杯!」 「敵潜!魚雷を発射しました!」 戸高艦長が叫ぶのと、大友一曹が悲鳴に近い声をあげたのはほぼ同時であった! 「爆雷!撃ち方はじめ!」 「一番!てェーッ!」 ドドドッ! 二式爆雷発射機から三十六発の小型爆雷が、一斉に夜空へと打ち上げられた。 爆雷が着水する前に艦の機関が唸り出し、一気に加速しはじめ敵潜へと向かって行き、打ち上げられた爆雷が弧を描いて海面へ落ちると、毎秒七mの速さで海中へと沈降して行き、一発でも命中すれば全弾が爆発するのである。 が、しかし爆発は起きなかった。 敵の魚雷も発射距離が短かった為、浅深度まで浮き上がる前に艦底を通過して行った。 「ちッ、続いて四番発射機!後方百八十度!よーいッ!」 佐竹水雷長が艦内電話に怒鳴った。 「敵潜の位置はどうか!」 水雷長の問いに、大友一曹が答えた。
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