第2章 ―海上護衛総隊―

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「ほう、香月大尉のところもそうだったか、例の研究所がなぁ。」 帝国科学研究所、通称帝科研は恐れおおくも天皇陛下が設立なされたと言われる、帝国の英知を極めた俊英達が集まり数々の新兵器を帝国軍にもたらし、我が艦を産み出した研究所だった。 一介の駆逐艦乗りの俺が言うのも変だが、最近の帝国海軍は変わってきていた。 今までは戦艦を主力と考える大艦巨砲主義がまかり通っていたが、真珠湾以降それに替わり航空母艦が海戦の主役となり、航空主兵が海軍の主流に取って代わっていた。 そればかりではない、これまで見向きもされなかった輸送船の護衛の為の海上護衛総隊まで創隊され、こうして我々が最新鋭駆逐艦に乗り、護衛空母までも与えられ実際に護衛任務に就いているのである。 こんな事など、つい半年前にはまったく考えられなかったし、考える者もいなかった。 やはり、帝国海軍は変わりつつあるのだと小倉大尉と話しながら感じている俺がそこに居た。 「おぉっと、こんな時間か、それじゃ俺は穴蔵に戻るとするよ。」 そう言うと小倉大尉は俺に短く敬礼をして、艦橋から出て行った。 俺は彼を見送った後、戦闘指揮所へ行き電測長の大倉上曹に様子を聞いた。
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