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「お疲れさまです。周りは至って静かで、先ほどの戦闘が嘘のようであります。」
大倉上曹はそう答えると、暗い室内で明るく輝く捜索電探の表示画面に目を落とした。
そこには十隻の輸送船を中心に九隻の護衛艦隊が、その周りをがっちりと輪形陣を組み進む、光り輝く光点が南方へと移動しているのが見えた。
すると次の瞬間、画面が真っ暗になり何も見えなくなった。
そして瞬きする間に、先ほどとは違う光の輪が画面一面に広がって行った。
「逆探にも何も映りませんし、我が艦隊の電探だけがこの海域を派手に照らしております。」
「我が軍の情報が正しければ、敵軍はまだ電探を実用化していないらしいからな。」
ついこの前まで、帝国海軍には自ら電波を出す事など闇夜の提灯といって、あざけり笑っていたのである。
その帝国海軍が今や電探や音波探信儀を駆使し、これなくしては先ほどのような一方的な戦闘を行う事など、かなわなかったのだからと俺は時代の変化を感じずにはいられなかった。
その後、我が艦隊は敵潜を警戒しつつもそれに出会う事なく航海を続け、太平洋における帝国海軍の一大根拠地であり、帝国の各種艦艇がひしめくトラック諸島へと着いたのである。
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