第3章 ―激戦の南太平洋―

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トラック環礁は直径六十四km、周囲二百kmという世界最大の珊瑚礁に囲まれた天然の要害であり、そこへの大型艦艇の入り口は三カ所しかなく、守るに易い要衝でもあったのだ。 それにしても暑かった。 さすが赤道に近いだけはある。 出航して四日目になって半袖半ズボンの防暑服に着替えたが、暑くてたまらなかった。 五月四日の昼過ぎに我が艦隊と高速輸送船団は、トラック環礁に着き南側の広い水道へ向かい、先に輸送船団から環礁内部へ入って行き、続いて摩周が入り次に我が艦の番が来た。 「水道通る、航海保安配置につけ!」 航海長が艦内電話で全艦に号令を発すると、手空き乗組員が上甲板に駆け出して防舷物や竹竿を用意しはじめた。 「間もなく珊瑚礁を通過する、全員警戒せよ!」 俺も艦橋から身を乗り出す様にして、キレイに透き通って鮮明に見える海中の珊瑚に目をやった。 どうやら満潮のようで、海面に出ている珊瑚は見当たらず、安全に通れそうだった。 「両舷前進原速、宜候!」 この時ばかりは艦長の戸高少佐が直接、操艦をしていた。 そして無事に水道を抜けると、そこは珊瑚礁と思えない程広大な内海が広がっていて、右手前方に秋島が見えて来た。image=129948995.jpg
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