第3章 ―激戦の南太平洋―

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我が艦隊は秋島と冬島の間を抜けて夏島へ向かった。 夏島には艦艇補給用の重油タンク群があり、各艦に給油をする為に向かったのだが、着いてみるとその変わり様に驚いた。 俺は過去にも夏島に寄港した事があったが、タンク群のすぐ手前にある一万t桟橋に、どでかいクレーンやらドックが建設されていたのだ。 またタンク群も新たな建設が始まっている様で、見たことも無い建設機械と思われる車輌がうごめきあっていたのである。 「香月大尉、あれは一体なんですかねぇ。」 手空きの佐竹大尉が俺の横に来て聞いて来た。 「よう判らんが、新型の建設機械か何かだろう。」 「あぁ、あれですか。あれは土を掘る排土工作車であります。」 いつの間にか横に安藤特務少尉が立っていて、俺達の疑問に答えてくれた。 「ずいぶん詳しいんですねぇ。」 「はぁ、自分が前の艦にいた時にラバウルで見かけたので、憶えていました。」 彼は俺よりも遥かに海軍歴が長く、我が艦の生き字引みたいな存在であった。 「あれがあるという事は、ここもじきに要塞化されますよ。」 トラックを要塞にするだと! まさか米軍がここまで攻めて来ると帝国は本気で考えているというのか?
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