第3章 ―激戦の南太平洋―

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トラックは確かに帝国にとって重要な基地であった。 と同時に絶対失ってはならない拠点なのだ。 だからこその要塞化であったのだろう。 俺達はそう理解し、建設作業を見守っていた。 すると、頭上を新型機の烈風の編隊が爆音を轟かせいくつも南の空へと、向かって行った。 多分ラバウルへ向かう部隊だろうと、見当を付けていると 「あれは、土浦航空隊の所属機であります。あそこは確か練習航空隊のはずなんですが…。帝国海軍はラバウルを決戦の地として、航空戦力を集中しているらしいと噂に聞いとります。」 そう言って来たのは、我が分隊の射手である國本先任曹長であった。 彼は海軍航空隊にやけに詳しく、ある日その理由を聞くと海軍へは航空隊を希望して志願したのだったが、あえなく落第しやむなく砲術に進んだという異色の経歴の持ち主だったのだ。 しばらくして給油も終わり、我が艦隊は高速輸送船団と合流し慌ただしくトラック諸島を後にして、目的地のラバウルへと航行を始めた。 ここからは敵機動部隊の行動圏内となるので、さらなる警戒が必要であった。 護衛空母の摩周からは敵潜警戒の為、盛んに零戦が発艦しては船団の遥か前方へと飛び立って行く。
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