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街が装いを光へと変え、金や銀のモールがどのショーウィンドウにも飾られている。 クリスマスまであと一月以上もあるというのに何とも気の早い感がする。   彼女は慣れない長い髪をもてあましながらあのショーウィンドウの前にいた。 この間の白いコートはまだディスプレイされたままだった。 彼女は店に入ると、すぐ近くの店員を呼び止めた。   ― すいません、あのコートください。   何のためらいもなくそう言うとコートを羽織り、お金を払った。   「うわあ、お客様、よくお似合いですよ。」   店員がしきりに感心するので、彼女は悪い気はしなかった。   彼女はまた夜になりかけている街を歩き出した。
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