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彼、稲本浩斗(いなもとひろと)は真っ暗な闇の中にいた。
今は少し前に買ったばかりのゲーム、「ヴァルハラ」のキャラ設定をしているところになる。
「説明書はある程度読んだが、やっぱ実際に体験するとなると違うな」
しばらくキョロキョロしていると、頭に直接響くように声が聞こえた。
『プレイヤー情報を登録します。お名前は、稲本浩斗様でよろしいですか?』
「あ、はい!よろしいです」
声からして話しかけたのは女性のようだ。浩斗はそのまま、姿の見えない相手との会話を進める。
『登録しました。それでは次に、浩斗様のキャラクターを作成します。キャラクターはあなたの意識を形にした、「ヴァルハラ」で生活するあなたの分身です。1度お決めになると変更はできませんので、ご注意ください』
「変更不能ってなりゃ、やっぱ選択は難しいな…」
そんな浩斗の呟きを無視し、女性の説明は続く。
『タイプは戦士、剣士、弓兵、槍兵、魔術師、僧侶があります。ここまでで質問はありますか?』
浩斗はタイプを聞いて、まず遠距離主体になりそうな魔術師と僧侶を、今まで遊んだゲームや実際の喧嘩で接近戦闘主体に戦ってきた自分の性に合わないと判断し、選択肢から外した。次に弓兵も外し、剣士を第1候補にしてから槍兵と戦士について考えることにした。
説明書には、戦士の武器は戦闘斧と書いてあった。浩斗はそのイメージとしては長さが自分の身の丈を越える柄に、自身の上半身と同じかそれ以上の巨大な刃がついた武器を思い浮かべており、そんな大きな武器を扱いきれる自信がなかった。
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