Color1◆始まる日常終わる日常

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何ものにも替えがたい二度寝の楽しみを奪ったのは、唐突な一本の電話だった。 寝ぼけ眼をこすりながら、半夢うつつで紅坂雅人【こうさかまさと】が電話に出る。 「あ、雅人?俺、修二だよ。何やってんだよ!今日、入学式だぞ!待ち合わせしただろう!」 が、雅人は夢うつつなままである。 「…それはそれはご苦労なことで」 「ご苦労じゃないだろ!7時半って言っただろ!先に行くからな」 「…わざわざのご連絡ありがとうございます…ふわぁぁあ~…」 雅人はだらしなく崩れたパジャマの中へ手を突っ込み、背中をかきながら受話器を置こうとした。 瞬間、彼の意識が二度寝の混濁から戻ってくる。 「…って待て、修二!入学式?おいっ!」 電話の向こうでは『ツーツーツー』という音だけが、雅人を笑うように響いている。
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