52人が本棚に入れています
本棚に追加
とうとう彼女が実家に帰る荷物を纏め出した。
引き止める手段は無い。
毎日の屍宅配便。
犯人を見付けられないし、この理由では仕事を休めない。
次の土曜日の朝。
手荷物を持って彼女は玄関に向かった。
靴箱の横には実家に送る段ボールが積まれている。
「じゃ、さよなら」
玄関の扉を開けた彼女はそのままフリーズした。
まったく動かず下を向いている。
もうこの件にうんざりな俺はオカルトじみた行動に溜め息を漏らした。
「さらに何か起きたのか?」
サンダルをつっかけて玄関を出ると、同じ様にフリーズし、彼女と見つめ合っている猫が居た。
「何?」
猫の足元には高級な獲物だろうでっぷりした雀が置いてある。
猫の後ろには子猫が3匹。
「お前達、この前助けた茶トラか?」
子供達が残酷な遊びをしようとしていたので、倫理上放っておけず助けたのだ。
「恩返し?笠地蔵みたい」
彼女はすっかり帰る気を無くしたようだ。
「飼い猫ならありがちだけど、野良に気を使われても」
犯人は判った。
オカルトじゃないのも判った。
だが。
屍が宅配される事実はきっと明日も変わらない。
最初のコメントを投稿しよう!