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カフェ・バーの重いドアを肩で押してゴーディは中へ入った。
タバコやコーヒーの匂いが混じったジャズがジュークボックスからは流れている。
ステップをジャズに合わせゴーディは近くのカウンターの椅子に座った。
「いらっしゃい、おや、ゴーディーちゃん、今日は一人かい?
もう来ないかと思ったよ。」
「ちょマスターさん、俺、常連ですよ。
勝手に忘れないで下さい~」
「何にする?」
「スルーしないで下さいよぉ~
あっコーヒーお願いします。
砂糖ミルク多めで!」
「は~い、ありがとうございます。」
…ここのマスターは独特の性格でいつもからかわれる…
「マスター、ジュークボックスかけるよ!!」
「どうぞご自由に~」
薄暗い照明に照らされたフロアを歩く、今、流れているのはディブ・ブルーベックのテイク・ファイブだ。
BBCでは良くリクエストにかかるヒットソング、サックスの音がたまらない。
「さて、何をかけよう…」
青年はポケットからおもむろに硬貨をジュークボックスに入れると、番号を押した。
「E‐12っと」
ボタンをおすとジャズが止まった。
暫くすると針が落ちる音がする。
図太いベース音が店内に響き渡る。
「よっし!カモンエブリバディだぁ」
「マスター、ギター貸して下さい。」
ゴーディはマスターからギターを受け取った。
単純なスリーコードでゴーディは演奏した。
チューニングが少しばかり狂ってはいたが、曲にはなっていた。
カフェバーのドアの方から、バイクの排気音が聞こえる。
単発の音だ、暫くするとバイクの音はドアの前で止まった。
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