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「殿、ちゃんと餅入ってるじゃないですか!」
餅を入れようと三成の椀を掴んだ左近は、椀の中にすでに餅が入っていることに気付き、問い掛けた。
「あぁ、それは……」
「あぁぁぁぁっ!!!」
三成が訳を言おうとしたその時、兼続が大声で叫んだ。
…何故か自分の椀を指差しながら。
「私の餅がなくなっている! …!まさか三成…」
「ふ、気付かなかったのか?」
「不義だぞ、三成!」
「落ち着け兼続。…人に自分のものを譲るのも立派な義だろう?ならば俺にお前の餅をやってもよいではないか。」
餅を取られて固まっている兼続に、三成は自分の都合のいいように“義”を利用してその場を誤魔化した。
「うむ、そうだな。三成に餅を譲ることは義だ!」
しかし兼続は誤魔化されていると気付かずに、三成の言葉を信じ込んでしまった。
「義ですね、兼続殿!」
「義だとも、幸村!さぁ、我らの義の友情と正月を祝いして、今日は夜まで呑むぞ!」
「はい!兼続殿!」
幸村も誤った義に拍車を掛けるようにそう言い、気分を良くした兼続は、左近に酒を持ってくるよう言い付ける。
左近はそれに素直に従い、酒を取りに行くべく部屋を出ていく。
兼続と幸村は左近の雑煮をすぐに食べ終えると、二人で雑談をし始めた。
一方、まだ雑煮を食べている三成は……
(付き合ってられんな。これを食べ終えたら部屋に戻るか。)
…などと呑気なことを考えていた。
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