学 manabi

5/5
前へ
/297ページ
次へ
屋上にはもう行かないと誓ったので中庭で食べる事にした。 パカ、と蓋を開けると 「…オムライス…」 が入っていた。 箸を手に取りいただきますを言った。 父さんの料理は美味しく飽きる事が無い。 母さんの料理は死ぬかと思った。 「…帰りたい」 一日一日がとても退屈で暇だ。かといって群れたくはない。 苦手なのだ。自分の姿に気を遣われたり、お子様扱いされるのは。 私だって、同じ年代なのに。 「…………」 一人は楽、だ。 もぎゅもぎゅと口を動かし飲み込む。 じわりと味が広がり舌が喜ぶ。 この時間は私にとって退屈でもあり、至福でもあるのだ。 「………帰りたいな」 父さん、母さん。 ここはつまらないよ。 私には、合わない。 「……」 …頑張らなくちゃ。 心配をかけさせる訳にはいかない。 こうして私の毎日は繰り返される。 同じ螺旋をぐるぐる廻って抜け出せる事は無いのだ。 その内、立ちくらんで倒れてしまうのだろう。 その日まで、私はただゆっくりと静かに生きていくだけだ。 終わりはすぐ来るのだから。
/297ページ

最初のコメントを投稿しよう!

754人が本棚に入れています
本棚に追加