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「ただいま」
パタムと閉じる扉。
やっと一日が終わったと安心する。
靴を脱いでいるとバタバタと騒がしい音が近付いて来た。いつもの事なので両手を広げスタンバイOK。
「蓮ちゃぁあん!!!お帰りなさぁい!」
「ただいま母さん」
飛び込んで抱き付いて来た母をぎゅっと抱き締め返す。温もりが暖かい。
「よぉ蓮仁、おかえり」
「父さん…」
後から出て来た父さん。
母さんに先を越された様だ。
すると未だ抱き付いてくる母さんに、
「蓮華、そろそろ離してやれ」
「え~…、むぅ…」
そう言った。
名残り惜しそうに離れた母に父さんは苦笑した。
「蓮ちゃん!今からママが晩ごはん作ってあげるから待っててねー!」
え゛、と私と父さんが苦い顔をした。
「ま、待て。蓮華、晩飯は俺が…」
「いいのよぉ、じゃあリビングで待っててねー!」
長く綺麗な髪をたなびかせてキッチンへ行ってしまった。
私は父さんをじろりと睨んだ。
「父さん、私今日夕飯いらない」
「そんな事言うなよ…」
「言いたくなる。母さんの料理は胃を破滅に導くんだよ」
「わかってるって…。
何とかする。
おかえり蓮仁」
ちゅ、と私の唇にキスする父さん。
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