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本当に何なんだ。
「……あんた誰?」
面倒だが聞いてみる事にした。近い将来、名誉毀損で訴えてやる。
「…へぇ、珍しいな。
俺を知らないのか」
どうりで俺への態度が普通な訳だ。
だから何だ、イライラは募るばかり。
「雪埜」
「…?」
「雪埜聖」
「ゆきのせい…」
「俺の名前」
男はユキノセイと名乗った。大層な名だ。
ユキノヨゴレにしてやればいいのに。
「…ユキノセイ」
「一括りで呼ぶな。
雪埜か聖か、どっちかにしろ」
「呼びたくない…」
「いきなり正直にきたな」
げっそりした顔で言うとユキノセイは少し苦笑した。何故呼びたくもないのに、覚えたくもないのに、関わってしまっているのだろう。厄日だ。
「…もういいや、雪埜」
「あえて苗字か」
「私君の事嫌いだから関わってこないで。
名前も呼ばないで」
「全拒否か」
人と関わって生きるのは苦手だ。母さんはそれをひねくれていると笑って言うけれど。
「まぁ、いいけどな。
俺も興味本位で近付いた訳だし」
雪埜は出口に歩いて行き、振り向いて言った。
「あんたは俺の1番嫌いなタイプだって事がわかった。笑わせてくれてありがとな」
バタンと重い扉が閉まった。
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