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今日も朝から食物を盗みいつもの場所に逃げ込む。
その場所は彼女だけが知っている小高い丘の上の草陰。
体の大きな大人には絶対見つからないような場所だった。
そうしなければ危険を冒して手に入れた僅かな食料をハイエナのような大人に奪われてしまう。
長くこうやって生きてきた彼女が身につけた唯一の身を守る術だ。
その時もそうして奪ったものを抱え、そこへ向かって必死に走っていた。
だが、その日はいつもの見慣れた光景とは違っていた。
人が木にもたれるように倒れている。
長い銀の髪に透き通るほどの白い肌、それはどこかの貴族や王族を思わせるような風貌。
日の光を浴びて銀の髪はきらきらと光を散らしている。
彼女はそっと近づいてみる。
黒い服の胸には大量の血がついている。
「怪我してる…」
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