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「あー…面白くねぇな、この世は」
青年・ガオル=ルシフェル(Gaol=Lucifel/Gaol=牢屋の意)は、偽りと悪意に塗れた空を仰ぎ見た。
ここは、某先進国・ラトンストリート(腐った通り)。
ここは、本当に治安が悪い。
スラングが公用語化し、若者の間では、軽犯罪が一種の遊びとなり、そして彼等は警察といたちごっこを続ける…否、むしろ警察の手に負えない所まで来てると言う方が正しいだろう。
かく言うガオルも又、軽犯罪の常習犯だった。
今日も頼り無い警察から逃れ、何処かの建物の屋上から空を見て居た。
「よぉ、ガオル、此所だったか」
「マリス」
声を掛けた相手は、マリス(Malice/=悪意)と言う名の、ガオルのツレであった。
金髪で、所謂イケメンなガオルと違い、刈り込んだ頭に、イカつい体格、焦茶色の肌を持って居る。
「またお前、ポリ公撒いて来たんか…よく飽きねェな」
笑いながらマリスは言う。
「―…退屈だよ。いい加減飽きた」
ぶっきらぼうにガオルが返すと、マリスはポケットから無造作に畳まれた、一枚の紙を手渡す。
「…何だぁ、コレ」
「裏球技…その名も[ジェイルボール(獄球)]とか言うんだとよ」
「ジェイルボール?」
マリスの説明を要約すると、こうだ。
ジェイルボールとは、ドッジボールから派生したとされる、世間には殆ど知られて居ない球技―
それは檻に囲まれたコート内で行われ、二チームに分かれて外野を置かず、比較的硬くて弾むボールを使い、相手が立てなくなるまで叩きのめす事が唯一のルールとなっている。
故に規制がされたが、今でも何処かの地下で行われている…と言われている。
「しかし…危なくねぇか?辞めとこうぜ」
「否…実はもう[誘い]が来ててなぁ…」
この球技は、最悪[死ぬ]。
故に[この球技に誘われた=喧嘩を売りに来た]と言う等式が成り立つ。
「……」
唖然とするガオル。
「ま、俺等はやった事あるし、まぁ何とかなるだろう」
「何とかって…」
しかし、断る訳にもいかず。
こうしてガオルは[裏球技]の世界に足を踏み入れる事となった。
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