第二章【いってきます】

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      † 墓地からの帰り道。 雪がチラツきそうな空模様の中、あるところに向かって車を走らせた。 小さなアパート。 玄関に掛けられた手作りの表札には、"今井和喜 今井小夜"と書かれている。 隊長の奥さんの住まいだ。 「カズくん、ここって…」 「最恐のデートコース」 そう言ってカッコ良く微笑んでからインターホンを押した。 余韻の残る呼び出し音、それに反してドタドタと走る足音が玄関先まで迫って来ているのが分かった。 ガタンッ ガツンッ ほぼ同時に響く音。 「お兄ちゃん!」 出てきたのは小さな男の子は勢い良く千尋の足に抱き付いてそう言った。 お兄ちゃんは君か開けた玄関ドアの角でオデコを打って、ウズクマってます。 と、言いたくなりながらも可愛い男の子の頭を優しく撫でてあげた。 「和夜!ダメでしょ!カズちゃんが…」 開けっ放しの扉から顔を出したのはチヒロにとって余りに意外な人物だった。
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