第二章【いってきます】

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「えっ!?そんなっ、いきなり…」 真っ赤になって慌てるチヒロに苦笑いが二つ返ってきた。 「ごめんね、隊長との約束だったから」 少しハニカんだようにして言うカズは、チヒロから小さな湯呑みとお椀の供えられた写真に目を向けた。 つられてチヒロもそれを見る。 そこには満面の笑みを湛える和喜の写真と家族の写真、カズと和喜が二人で写った写真、他にも沢山のが置かれていた。 「僕に、命より大切な人が出来たら必ず紹介するって約束してたんだ…」 「私達にとってカズくんは息子の様な存在だったから、和喜も楽しみにしてたわ」 穏やかに話す二人にチヒロは無性に恥ずかしくなってきた。 まるで結婚の挨拶に来たような錯覚、普段は先生の小夜がカズの母親の様にも思えてくる。 「それから、コレを…」 そう言ってカズが差し出したのは分厚い銀行の封筒。 コタツ机の上に静かに置かれて小夜に差し出した。
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