第三章【出発と手紙】

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椅子にもたれ天井を見つめて白い煙を吐いた。 「秋山さん、奥さんが来てるんじゃないですか?」 どこからとも無く続く声。 「女房だって分かってるさ」 最後の一杯を吸って吐くと右手に持ったタバコを黒い灰皿に擦って火を消す。 ミシッと音を立ててしなっていた椅子が元に戻る。 「奥さんにも体にも優しくない人ですね」 未だ若干の煙を上げる吸い殻にトドメを刺して席を立つ。 「小隊長よりはずっとかマシだと思いますよ」 「同感」 「同じく」 美咲、テツ、トモの順で口にすると周りにいた全員が縦に大きく頷いて同意した。 「待て待て、なんで全員が納得してるだ!?」 「当たり前だ。お前は…」 テツが煙草を片手にそう言いかけたとき、スピーカーからけたたましい緊急サイレンが響いた。
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