第四章【ライフルと絵筆】

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「何書いてんだ?」 突然後ろから声をかけてきたのはテツだった。 最前線までの長い移動の中で二度目のキャンプ地入りで、今は米軍の補給基地に居る。 「見れば分かるだろ?手紙だよ」 書きかけの手紙を指して見せると、テツは曖昧に返事をした。 明日には最前線の基地に着く、その前に一通出しておきたかった。 「恥ずかしいことは書くなよ、内容は見られるだろうから」 そう言って、テツはどこかに歩いていった。 戦地で戦う兵士には情報を隠す義務がある、つまり、僕らが戦地に居る間は外部との連絡手段が厳しく制限される。 手紙も内容確認が入るし、電話も盗聴されている、戦場はそれだけで特殊な世界を形成しているのだ。 「よし、書けた」 手紙を折り畳み封筒に入れて封をした。 それを荷物の中に入れて立ち上がる。 「出発だ」 どこかから聞こえる声に従い荷物を持ってトラックに乗る。 戦車の先導で基地を出発する、気付くと景色は砂漠からジャングルに変わっていた。
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