第四章【ライフルと絵筆】

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その日は、チヒロの大学の入学式だった。 まだ少し肌寒い時期で桜のさの時も見えないような天気だったのを今でも覚えている。 校門までカズが手をつないで送ってきてくれた。 チヒロが少し我が儘を言ったからだ。 「二人とも、早くしなさい」 チヒロの母親は一足先に着いていて、校門で歩いて来る二人を急かすように手招きしていた。 それを見て二人は少しだけスピードを上げて歩いた。 「チヒロ!腕くらい組みなさいよ!」 と、カメラを構える母親は娘を促した。 すると、チヒロは恥ずかしそうにしながらカズと腕を組んだ。 「写真も撮ったし、行こっか」 チヒロは両親とカズに声をかけて校門をくぐった。 すると、周りからヒソヒソと話し声が聞こえてくる。 耳を傾けると嬉しいような嬉しくないような話を周りの女の子がしていた。
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