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誰も居なくなった 白い病室で あたしは一人 たたずんで居た。 ぱたぱた.と 透のノートが風で揺らめく。 あたしはノートを手に取って 1ページ 1ページ めくってみた。 沢山綴られた 文字。 ――――…透とあたしの 会話のカケラ。 「透....っ」 どうして透なんだろう。 あたしは丈夫だから 免疫とか 肝機能とか 少しくらい分けれたらいいのに.... 《菜月....》 ふいに.ノートの端に その文字を見つけた。 ――…初めて透が あたしの名前を呼んでくれた時の 言葉。 肩が.震えた。 視界はにじんで ぼやけて 歪んだ。 頬を伝う 涙。 「――……透…死んじゃやだよ……」 これが あたしの本心だ。 だけど 哀しいけど 透は 死んでしまうだろう。 ――…発作の頻度は増した。 起きて居られる時は減り. 体温も 低いまま... ――医師にも.覚悟しておいてください.といわれた。 「とおる....」 あたしは 何度も何度も 彼の名を呟いた。  
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