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そして彼は扉の取っ手へと手をかけた。しかし何故か、しばらくその場に立ち尽していた。
不審に思った彰太が「どうした」と尋ねる。
やがて彼はゆっくりと振り返り、呆然と呟いた。
「扉が…開かない」
室内は静まりかえった。
しかしその静寂を払いのけるように、弘毅はわっはっはとおかしな笑い声を上げて、扉に近付いていった。
そして賢祐の背中をぱんっと叩くと、取っ手に手をかけた。
「こんなのてめーの力がないだけだよ!ほら、俺の力なら……んっ?んん……」
彼はすっとんきょうな声を上げる。
力の限り引くのだが、開かない。
「待てよ…開かねえよ」
何度押しても引いても、びくともしない。
それを見かねたむつみが重そうな椅子を運んでくると、それを容赦なく扉に叩きつけた。
しかし結果はー
「…開かない…」
その後全員で一気に引いたりしたのだが、何も変わらない。まるで、外から誰かが扉を開かないように引いてるように…
「…やばいよ…閉じ込められた…」
麻耶はその場にへたへたと座りこむ。携帯を取り出すのだが、圏外。
ーこれで、
外に出れる可能性は
一気に絶たれた。
皆途方に暮れながら、開かない扉を見つめていた。
その時初めて、
その場にいる誰もが後悔したのだ。
しかしー
そう思っても、
もう 遅い。
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