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しばらくすると、暗闇で誰かが泣き出した。
「やだよお…本当はあたし、来たくなかったのおぉ…」
むつみは泣きじゃくる耀子の横にしゃがみこむと、手をとって「ごめんね」と謝った。
なおも泣き続ける耀子。それにつられたように泣き出すむつみ。
暗い屋敷には、二人の泣き声だけが響いていた。
「うるせえ!」
突然、弘毅の怒声が響いた。
その雰囲気に圧倒されたのか、二人は一気に静かになる。
座り込んでいた弘毅は立ち上がり、二人の元へと歩み寄った。二人は脅えているように見えた。しかし彼はふっと微笑むと、優しい口調で言った。
「まだ諦めんなよ……まだ出れないと決まった訳じゃねえ…この扉が駄目なら……他を探せばいいだけだ」
そう言うと、二人の頭を撫でた。
「脅かしてごめんよ」
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