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梨花はぼんやりと天井を見つめる。
くもの巣ひとつなく、綺麗な天井…
しばらくの静寂。
やがて、梨花が口を開いた。
「ねえ…この屋敷、おかしいと思わない?」震える声で、静かに呟く。
「…ああ…俺も思う」声を落として答える。
「だってさ……廃墟になってこんなに経ってんのに、すっごい綺麗なんだよ?掃除されたみたいに……おかしいよ…絶対何かあるよ……」そう言い、唇を噛み締める。恐怖のせいか、涙が溢れそうになってくる。彼は黙ってそれを聞いている。
「それに……さっきの人……」顔を覆いながら続ける。
「私…入る前にも、誰か見てるって感じてた……こんな、本当に怖くて怖くて、逃げたいって思ったの初めて。何かあるって思って…でも皆…皆…」
突然涙が溢れてくる。唇がガタガタ震える。
「私…私…」なおも喋り続けようとすると、彼が小さい彼女の頭を撫でながら、「もういいよ」と優しく呟いた。
「とにかく……一刻も早くここから出なきゃな…出れる場所、探そうぜ」
彼女はゆっくり立ち上がると、小さく「うん」と呟いた。
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