ウワサ

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「…ちょっと、聞いてる?」 シャーペンの先で肩をつつかれ、やっと気付いた。 「あ…うん、聞いてるよ」 彼女はうろたえながら答えた。 「本当に?」 疑うように顔を覗きこみながら言う。彼女はわざと顔を背けると、窓の外を眺めながらヘラヘラと笑った。 「怪しい」 麻耶はいぶかしげに彼女の顔を見ながら腕を組んだ。 「…だから今夜、よろしくね」 彼女はきょとんとしながら麻耶を見つめる。 「…え?…」 ー何が? 麻耶は呆れたようにため息をつくと、彼女の肩にポンと手を置いた。 「やっぱ聞いてなかったのね…」 「…ご、ゴメン…」 麻耶は握っていたシャーペンで、机から出したメモ帳に何かサラサラと書くと、彼女に押し付けるように渡した。 「こ、れ!よろしくね」 そう言うと、急いで下校の支度を済ませると、麻耶は愛しい彼氏のもとへと走り去っていった。 彼女が渡されたメモ帳を見ると、 ー今夜8時にお化け屋敷集合! 忘れんなよ! と乱暴な字で。そして紙の端に描かれた、お世辞にも上手いとは言えない、きっと自画像であろう少女の絵。 そのイラストを見て、思わず吹いてしまった。 廊下では麻耶と彼氏が腕を組みながら、楽しそうに喋っている。 彼女はそんな光景を羨ましそうに眺めながら、「いいなあ」と呟いた。 藤咲梨花、17歳の高校2年生。 彼氏はいない。…恋愛経験はナシ。 欲しいとは思うのだが、周りの女子よりも、そういうことにかなり鈍感なのだ。 ー私も欲しいなあ… そんなことを考えながら廊下を見つめていたら、いつの間にか二人はいなくなっていた。
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