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「ねえ…」
振り返ると、寝室から出てきた耀子が立っていた。
「耀子…もう大丈夫なの?」
「あたしはもう大丈夫…」
耀子はしっかりした足取りで皆の方に歩んでいくと、「どうしてあたし達が殺されなきゃならないの?」と言い、うつ向く。床に、涙がぽろぽろとこぼれる。
誰も、彼女にかけてやる言葉が見付からなかった。
すると、弘毅が立ち上がり耀子に歩み寄っていった。
そして彼女の肩を両手で強引に掴むと、静かに言った。
「俺達は殺される……皆……皆……俺も…お前も…」
その顔は冷静だった。
彼女は脅えていた。体が小さく震える。
「やだよお…」
彼は続けた。
「あの女が…俺達を殺しにくる。…坂口みたいに」
彼女はわあっと大声を上げると、寝室に走り去って行った。
梨花は弘毅に近付くと、真っ直ぐに目を見据えて言った。
「どうして耀子ちゃんにまでそんなこと言うの!?」
「だって…本当のことだろ?俺達…殺されるんだろ?」
彼の目は据わっていた。
「だからって……あの子をあんな怖がらせてどうするの!?」彼女は怒鳴った。
すると彼はしばらく彼女を見つめた後、乱暴に両手を掴んだ。
「お前は怖くないのかよ?怖くないのかよ!?」
掴む手に力がこもっていく。
「離してっ…!」
彼女の額に汗が浮かぶ。
「おい!離せよ!」賢祐は怒鳴るが、彼の耳には入っていないようだった。
「じゃあ…お前が俺を助けろよ…」
そう言うと、無理矢理彼女の体を押し倒した。
頭が床に叩きつけられ、激痛が走る。
「いたあいっ…!」
彼は倒れた彼女の襟元を掴むと、無表情で彼女を見据えながら言った。。
「助けろよ…出来んだろ?おい…おい!」
だんだん声が荒々しくなっていく。
「やめてっ…!」
「おい!答えろよ!」
賢祐が梨花の上の弘毅の襟を掴むと、そのまま顔面を思いきり殴った。
「てめえ…ぶざけんじゃねえ!いい加減にしろよ!!」
賢祐は弘毅を睨みつけると、飛ばされた彼を再び殴ろうとする。
梨花は慌てて賢祐の腕にしがみつくと、不安そうな顔で「やめて!」と叫んだ。
弘毅は口を切ったらしく、口から流れてくる血を手のこうで拭うと、賢祐を憎々しそうに睨みつけてから、廊下に飛び出して行った。
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