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「梨花、ごめん…大丈夫か?」賢祐は落ち着きを取り戻して呟いた。
梨花も立ち上がると、「大丈夫」と答えた。
さっき弘毅に掴まれた腕を見てみる。
相当強い力だったのか、手形に痣が出来ていた。
そしてさっきの弘毅の態度を思い出し、だんだん彼が心配になってくる。
「弘毅君……大丈夫かな…」
不安そうに呟く。
賢祐は深いため息をつくと、ゆっくりソファーに腰を下ろした。
「あいつ……その女って奴を見て…おかしくなっちまったな……あいつは相当怖いんだろうな…」そう言い、長い前髪をかきあげる。
さっきからその状況を黙って見ていた麻耶が、眉間に皺を寄せながら口を開いた。
「私達……殺されるの?」
梨花は彼女を勇気づけるように強く手を握ると、明るく「大丈夫!絶対助かるよ」と言った。
麻耶も梨花の手を握り返すと、微笑しながら「大丈夫だよね」と言った。
ー大丈夫。
私達は、絶対に助かる。
もう
誰も死なせない。
ーその時は、
まだそう思ってた。
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