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恐怖で、身体を震わせながら涙が頬を伝う。その私の頭に、大きな手が添えられる。
「よかった。本当によかった……」
私が視線をあげると、そこにはオールバックの黒い髪、すーっと筋通った高い鼻に整った朱色の唇。優しい漆黒の双眸に口元に携えた髭が印象的な四十代前後ぐらいの、ハンサムな男性がいた。
「あ、ありがとう……ございます」
その男性は、柔和な笑顔を向け私の頭をゆっくりと撫でた。
心臓が騒ぎだす。
その瞬間、なぜか枯れたはずの涙が溢れだした。
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