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目の前で起こった出来事に呆気にとられていた林檎だったが、しばらくしてハッと我に戻る。
「長歩!!」
林檎がそう言うと、林檎の姿が少しずつたくさんの桃色の花びらに代わり、裕也のいた扉の方に流れるように空気を舞い、やがて裕也の隣に林檎の形をとった。
「裕也様、恐れ入りました。
さぁ、こちらへ」
そう言いながら裕也の横にひざまつくと林檎は目の前の扉を開けた。
本来なら林檎のように何らかの形をとって時間を少しかけながら長い距離を移動するのが長歩というもの。
そして、極端にスピードを上げて歩く魔法を速歩という。
裕也はそれを同時にすることで、ものすごい距離の廊下を渡り小さく見えていた扉の前に立ったのだ。
いまいちその状況を掴めないままの裕也だったが、とりあえず林檎の開けた扉の中に足を踏み入れる。
(これはなんかの悪い夢だ…あー早く覚めろ…)
次第にそんなことまで考えてしまう裕也であった………が。
扉の先に見えた世界に裕也は目を見張った。
「な、なに……これ」
今度は裕也がア然と周りを見ていると、林檎は微笑んで裕也を見る。
「お帰りなさいませ、裕也様」
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