67人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
──ギギギー
何とも不気味な音を起てて大きな扉が開く……
と、思っていた裕也だったが。
予想を裏切り、その城の中央の大きな門の扉は、大した物音一つ起てずに一瞬にして開いた。
敢えて効果音をつけるとしたら『パンッ』と開いた。
その分厚くデカい扉を、林檎の後に続きながら通りぬければ、城の外壁からは見れなかった、城内部の造りが段々見えてくる。
「名を申せ」
林檎と共に、その城自体の入口であろう、これまた大きな扉の前に立てば、扉から声が聞こえる。
「私は林檎。こちらに見えるのは、先程お目覚めになられた裕也様にあられる。
扉よ、裕也様の匂いを忘れることなかれ」
どうやら林檎は扉と会話しているらしい。
不思議なことが多過ぎて、もはや認めざるを得ない。
裕也は内心そう思いながら、顔も、口も、何もついていない目の前の相変わらず白い、喋る扉を凝視していた。
「ゆっ、裕也様だと?
それに、貴女は林檎か。
何とっ、遂に、遂に時が来たのだなっ?」
最初のコメントを投稿しよう!