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扉のどこから声が聞こえるのだろうか。
扉全体にはよくわからない文字のようなものがたくさん彫られてあって、なんだかそこから音が出ているようにも思える。
前ばかりを見ていて周りを見ていなかったが、
振り返って見れば、さっき抜けてきた門はいつの間にかしまっていて、今裕也達が立っているのは、その門と目の前の門との間。
10メートルくらいはあるだろうか。
下には白く細かい砂利のようなものが敷詰められ、裕也達はその上に立っている。
左右両方には、少し距離のあるところに壁が見え、まるでこの隙間に閉じ込められているような感覚だ。
「私は一刻も早く、この朗報を城の者に伝えたいのだよ。
早く通してくれないか?」
そう言う林檎の表情は、後ろにいる裕也からは見えないが、その口調は、《嬉しくて堪らない》と言っているようだ。
「そりゃあ、そうだ。
早く伝えるに超したことはない
では、手を。」
「ここの門は手をつけるのか。
匂いだとばかり思っていた…
さぁ、裕也様。手を」
会話の蚊帳の外にいた裕也は、辺りを見ていた為、いきなり話し掛けられても何がなんだかわからない。
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