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「……手、…ですか?」
「はい。手を」
戸惑いながらも林檎を見れば、右手を扉につけている。
(手をあてれば開く…とか?)
半信半疑で扉に触れれば、ものの数秒で扉は開いた。
今度は先程の扉とは違い、ゆっくりと《ギギギー》と音をたてながら。
「ようこそ、お戻りになられました。裕也様。お帰りなさいませ」
扉は開くと同時にそう言い、林檎と裕也が中に入れば素早く閉まった。
(さっきからみんなして『お帰りなさい』とか言うけど……こんな所に、来たこともないし…)
心の中ではまだぶつくさと言いながらも、前を向いて中を見る。
「…わぁ………」
思わず感嘆のため息が出る程の絶景がそこにはあった。
……城の中だよな?
なのに何故か、そこには青空と白い雲、広い街並みに中央には大きな、さっき見た城が見える。
まるでどこかの国一つを空から見ているかのようだ。
あれ?今、俺達はあの城の中に入ったんじゃなかったっけ。
なんであそこにあるんだ?
ってか、何で空?何で街?
混乱する裕也を尻目に、林檎は懐かしそうに街を……いや、国を見下ろす。
「嗚呼、やっと私は胸を張ってヒガシに帰れた」
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