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裕也と林檎が立っていたのは、国を見下ろす丘のような、とても高い高台だった。
後ろを振り返ればしっかりと先程通った喋る門があるし、しかしその門は何故か山の斜面……というか、地面に垂直に伸びている大きな岩のようなものの壁にある。
自分達は、あの岩壁の向こうから来たのだろうか。
それにしても裕也と林檎の立つこの高台には、下るのに必要な坂道なり、階段なりが見当たらず、広さもさしてない。
どうやって、あの街へ行けばいいのだろうか。
振り返って後ろを見たり、前を見てその街並みを見たり…
裕也の挙動不審な様子に、林檎は顔をしかめて考える。
(裕也様は、もしかして……)
「裕也様、」
「………はい?」
様付け呼びには慣れている。
前原の家に仕える者は、皆、そう呼んでいたからだ。
ただ、何だか林檎に言われると、会ったばかりというのと家とは関係のない他人というのも手伝って、なんとなく返事がぎこちなくなった。
「もしかして、記憶が戻られないのでしょうか?」
「記憶?……ですか?」
「はい。こちらで過ごしていた記憶です。覚えてないのでしょうか?」
コチラデスゴシテイタ……?
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