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城の門番らしき人は、皆、そろって林檎と裕也を見るやいなや頭を深々と下げた。
家での光景によく似ている。
毎日、俺が家に入れば、綺麗に並んだ使用人たちが頭を下げて出迎えてくれていたし。
‥……みんな、俺が急に消えて、今頃どうしているのだろう。
自分の置かれた訳のわからない状況に混乱して、前原家のことを全く考えてなかった。
心配しているだろう。
混乱しているだろう。
「こちらです」
悶々と考えながらも、目の前を先導してあるく林檎に着いていって歩くと、
いくらか階段や重々しい廊下を歩いて、ようやく金色の、一際大きく立派な扉の前にきた。
(………そういえば、)
仮にも城なんだから、ここにくるまでに、何人か使用人や兵、役人なんかの何かしら人に会うはずなのに、
人っ子一人見当たらない。
そんなことを不思議に思って考えている裕也を尻目に、
林檎が目の前の扉に手を添えて開けると、そこには…‥‥
「…………え?」
「これは、
裕也様がかけた魔法。
裕也様が戻られた時に、
裕也様が、
解く手筈になっています」
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